2013年7月2日火曜日

さるとびっき













「さるとびっき」(武田正/再話 梶山俊夫/絵 福音館書店 1993)

昔、こんぴら山のふもとにサルとびっき(カエル)がいました。ある日、サルがびっきに、「おらと2人で田んぼをつくらねえか」といいました。「それはいいことだ」と、びっきはこたえました。

サルとびっきは山にでかけ、田んぼつくりをはじめます。でも、サルはすぐ、「おらは肩がこってきた」といいだします。あくる日、びっきが、「きょうは田をだかやしにいくべえ」と、サルのうちを訪ねると、「きょうは頭が痛くてとてもいかれねえ」と、サルはこたえます。そこで、びっきはひとりで田んぼにいき、ぺったらぺったら田をたがやして――。

山形の昔話をもとにした絵本です。原話の語り手は川崎みさをさん。絵は、柔らかい描線でえがかれたユーモラスなもの。ほとんど2色なのですが、部分部分につかわれた色が大変効果的です。文章は民話調。冒頭を引用してみましょう。

《むかし、あったけど。
 こんぴらやまの ふもとに、さると びっき いたっけど。
 あるひ、さるが やぶから がっさがっさと やってきて、
 「びっきや びっき。おらと ふたりで たんぼ つくらねえか」
 こういったど。》

このあと、仕事をさぼってばかりのサルの代わりに、びっきはひとりで田植えをし、草刈りをし、稲刈りをします。さて、モチつきとなったとき、サルがやってきて、たちまちモチをつき上げます。そして、サルは、「山の上からモチの入ったうすを転がして、先にモチを拾った者が食うことにしよう」と、欲の深いことをいいだして――。お話は最後に、サルの頬やお尻がなぜ赤いかという由来譚となって終わります。小学校低学年向き。

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