2013年1月9日水曜日

ゼラルダと人喰い鬼












「ゼラルダと人喰い鬼」(トミー・ウンゲラー/作 たむらりゅういち/訳 あそうくみ/訳 評論社 1977)

昔むかし、あるところに、ひとりぼっちの人喰い鬼がいました。童話にでてくる人喰い鬼のように、とても残酷で、朝ごはんに子どもを食べるのがなによりも大好きでした。毎日子どもをさらいにやってくるので、町のひとたちは、小さな息子や娘を、地下室や地下の酒蔵にかくさなければなりませんでした。町から遠くはなれた、谷間の森の開拓地には、ひとりのお百姓さんが、ひとり娘のゼラルダと暮らしていました。ゼラルダはお料理が大好きで、6つになるまでには、煮たり、焼いたり、揚げたり、蒸したりできるようになっていました。

さて、年に一度、お百姓さんは、作物を売りに町にいきます。ですが、たまたま気分が悪くなり、ゼラルダがひとりで町にいくことになります。荷馬車をあやつり町にむかうゼラルダを、腹ぺこの人喰い鬼が、崖の上で待ち伏せしていて──。

「すてきな三にんぐみ」で名高い、ウンゲラーによる絵本です。絵は、マンガ風の水彩。このあと、あせった人喰い鬼は崖から転落、気を失ってしまいます。人喰い鬼のことなど、ちっとも知らないゼラルダは、この怪物を介抱し、馬車に積んでいた作物をつかって、得意の料理をごちそうします。ゼラルダの料理がすっかり気に入った人喰い鬼は、「料理をつくってくれたら黄金をやろう」と、ゼラルダを自分の城に招きます。料理好きの女の子が、恐ろしい人喰い鬼をすっかり籠絡してしまう、なんとも楽しい一冊です。小学校低学年向き。

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