2012年6月12日火曜日

バオバブのきのうえで









「バオバブのきのうえで」(ジェリ・ババ・シソコ/語り みやこみな/再話 ラミン・ドロ/絵 福音館書店 2005)

昔、ジョレという村にひとりの赤ちゃんが生まれました。赤ちゃんが生まれて3ヶ月もたたないうちに、お父さんが亡くなり、5ヶ月たつとお母さんも亡くなってしまいました。そこで、ジョレの村のひとたちは、お父さんとお母さんが次つぎに死んだのは生まれてきた子どものせいだといって、男の子を遠い森に捨ててしまいました。

森に捨てられた男の子は、動物たちが乳を飲ませ、食べものを分けてくれたおかげで大きく育ち、木や虫や石の話すことばや、夜空の星の音楽がわかるようになります。でも、ある日、自分と動物はちがうことに気づいた男の子は、雨の季節がくると大きなバオバブ木に登り、歌をうたうようになります。男の子が歌をうたうと、大きな風が起こって、雨雲が吹き飛び、おかげでジョレには雨が降らなくなってしまいます──。

アフリカのマリの昔話をもとにした絵本です。巻末の作者紹介によれば、再話者のジェリ・ババ・シソコは、サハラ砂漠に近い北辺の村ニオロの生まれで、8歳から語り部であった父親に語りと四弦ンゴニの弾きかたを仕込まれたといいます。また、絵を描いたラミン・ドロは、ドゴン族の祭司の家に生まれ、高校の美術教師のかたわら、マリ国会議事堂の壁画なども制作したひとだということです。絵は非常に雰囲気のある線画。このあと、男の子の歌のために雨が降らなくなったことを知った村人たちは、バオバブの木の上に登った男の子をむかえにいきます。簡潔な語り口が印象深い、昔話絵本です。小学校低学年向き。

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