2012年6月8日金曜日

なみだでくずれた万里の長城








「なみだでくずれた万里の長城」(唐亜明/文 蔡皋/絵 岩波書店 2012)

昔、人里はなれた小さな村に、孟(もう)さんと姜(きょう)さんが、となり同士で住んでいました。2人の家には子どもがありませんでした。ある年の春、孟さんの家の軒下にツバメが巣をつくったので、2人はそのツバメをとても可愛がりました。すると、2羽のツバメは翌春もやってきて、孟さんの手のひらに、ひょうたんの種をひと粒落としました。孟さんがその種を庭に埋めると、つるはどんどん伸び、姜さんの庭まで届きました。つるは、姜さんがつくった棚に青あおとした葉っぱを茂らせましたが、ひょうたんはたったひとつしか実りませんでした。いつしか、ひょうたんは驚くほど大きくなり、2人が半分に分けようとしたところ、なかから女の子の赤ちゃんがあらわれました。そこで2人は、この赤ちゃんを、孟姜女――孟と姜の娘――と名づけ、大事に育てました。

さて、歳月がたち、美しい娘に成長した孟姜女の前に、あるとき万喜良(ばんきりょう)という若者があらわれます。万喜良は、万里の長城をつくるための人手として、役人に連れていかれそうになったところを逃げてきたのです。孟さんと姜さんは、万喜良をかくまうことにし、万喜良と孟姜女は仲良くなります。ところが、2人の結婚式の晩、役人がやってきて、万喜良連れ去られてしまいます――。

孟姜女伝説に材をとった絵本です。絵は、味わい深い水彩。このあと、何年も帰ってこない夫を探しに、孟姜女は万里の長城へと旅立ちます。途中、大きな川やけわしい山は、孟姜女のために道をつくってくれます。孟姜女はどこまでもどこまでも歩いて、ついに長城にたどり着くのですが…。悲しい伝説を品格のある絵でえがいた、美しい絵本です。小学校中学年向き。

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