2012年5月11日金曜日

おてがみです









「おてがみです」(ガブリエル・バンサン/作 もりひさし/訳 ブックローン出版 1997)

わたしは“小さな郵便屋さん”と呼ばれていた。ほんとにちびだったからね。郵便屋さんの仕事は大変だよ。早く起きて郵便をとりにいく。家に帰って分ける。毎日、10時になると出発する。早く配達することなんてなかった。わたしはゆっくりと郵便をくばって歩いた。わたしはみんなの役に立っていることを誇りに思っていた。

郵便屋さんは手紙を高く上げながら、「ゆうびーん」と声をあげます。でなければ、郵便の合図のラッパを吹きます。すると、子どもたちがあつまってきます。子どもたちは、郵便屋さんがくれるキャンディやチョコレートやビスケットが目当てです。毎日、郵便屋さんを待っている女のひとがいますが、彼女にだけ渡す手紙がありません。そこで、郵便屋さんは1枚ハガキを書いて、彼女に送ります──。

副題は「あるゆうびんやさんのおはなし」。副題どおり、“小さな郵便屋さん”である〈わたし〉の回想記です。絵の下につけられた文章は、まるで写真をみながら語られた思い出話のようです。絵は淡彩。ガブリエル・バンサンは、広びろとしたところを描くのが素晴らしく上手です。本書でも、その手腕はいかんなく発揮されています。最後、見開きのページいっぱいに、本書に登場したひとたちの手紙が記されています。大人向き。

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