2012年1月31日火曜日

炭焼長者











「炭焼長者」(稲田和子/再話 太田大八/絵 童話館出版 2008)

昔、あるところに千石屋という長者がいました。商いで遠くにでかけ、もうすぐ子どもが生まれるからと道を急いでいました。ところが、村境の峠で、日がとっぷりと暮れてしまいました。そこで、塞の神様の木の下でひと晩眠らせてもらうことにしました。

夜、長者がふと目をさますと、鈴のついた馬に乗ったしゃくし(しゃもじ)の神様があらわれます。しゃくしの神様は、今晩、長者の家と、となりの小作人の家でお産があるので、一緒にいこうとサイの神様を誘いにきたのです。でも、塞の神様は、不意の泊まり客がきたのでと、しゃくしの神様の誘いを断ります──。

このあと、ほうきの神様となべしきの神様がやってきますが、やはり塞の神様は断ります。明け方近く、3人の神様は連れだってもどり、塞の神様にお産のことを話します。「長者のところは難産じゃったが、ぶじに元気な男の子が生まれた。けれども、この子は青竹3本の運で寿命は四十九までじゃ。となりの小作人の嫁にもお産をさせてきたが、これは女の子で塩一升の運をさずけてやった」──。

山陰の昔話をもとにした読物絵本です。文章は、昔話らしい言葉づかいで記されています。後半は、このとき生まれた長者の息子と、小作人の娘の話になります。息子と嫁は、一度は結婚するのですが、息子の暴君ぶりに愛想をつかした娘はそこを去り、炭焼の五郎左衛門と一緒になって…と物語は続きます。巻末に、稲田さんによる詳しい解説がついています。小学校中学年向き。

0 件のコメント:

コメントを投稿