2011年10月17日月曜日

ちいさなたいこ










「ちいさなたいこ」(松岡享子/作 秋野不矩/絵 2011)

昔、あるところに、心のやさしい百姓の夫婦が住んでいました。もう年をとってあまりはたらけなくなったので、遠いところの田んぼをひとにゆずり、うちのまわりの畑にわずかの野菜をつくって暮らしていました。ある年の春、2人は畑にカボチャの苗を植えました。夏がきて、やがて黄色い花が咲き、実がいくつもなると、そのなかに、ひときわ大きなカボチャがありました。「この色つやのいいこと。きっと味も格別でしょう。でも、ふたりでは食べ切れませんねえ」と、2人は子どもでもながめるように、目を細めてカボチャをみつめました。

さて、ある夜のこと、どこからか楽しそうな祭りばやしの音が聞こえてきます。2人が音のほうにいってみると、音はあのみごとなカボチャから聞こえてきます。カボチャからは光がもれ、おじいさんが指で押すと、そこに丸い穴が開き、のぞくとなかには小さな広場があって、親指ほどの男や女が30人ばかり輪になって踊っています──。

松岡享子さんと秋野不矩さんによる絵本です。このあと、2人は毎晩お囃子を聴き、踊りをみるのが楽しみになるのですが、ある晩、いつもの時刻になってもお囃子が聞こえてこなくなります。みると、皮のやぶれた太鼓のまわりで、小さいひとたちが、ひとかたまりになってすわっています。そこで、2人は、細い竹とドングリの皮と、渋を塗った薄い紙をつかって太鼓をつくり、箸でつまんでカボチャのなかにいれてやり──とお話は続きます。子どもの本は、いって帰ってくる話が多いのですが、この作品はそうではなく、その点印象に残る一冊です。小学校低学年向き。

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