2011年6月23日木曜日

サー・オルフェオ












「サー・オルフェオ」(アンシア・デイビス/再話 エロール・ル・カイン/絵 灰島かり/訳 ほるぷ出版 2004)

いにしえの世に、サー・オルフェオと呼ばれる王様がおりました。この王様は、勇敢で慈悲深いだけでなく、竪琴を手にするとたぐいまれな調べをかなでることができました。サー・オルフェオには、ヒュロデスという名の、うるわしいお妃がおりました。ある日、りんごの木の下でまどろんでいたお妃は、絹のような悲鳴をあげ、お城にかけこんでいきました。なにごとが起こったのかとサー・オルフェオがたずねると、お妃は、「不気味な大王がやってきて、わらわを彼の国に連れてゆくのです」とこたえました。

翌日、サー・オルフェオは愛するヒュロデスの手を握りしめ、よりすぐりの騎士たちに円陣を組ませ、りんごの木の下で敵にそなえるのですが、お妃は忽然と姿を消してしまいます。そして、サー・オルフェオは国を家老にまかせ、竪琴だけを手にしてヒュロデスをさがす旅におもむきます──。

中世の英国で、吟遊詩人たちにうたわれた歌をもとにした絵本です。訳者あとがきによれば、このサー・オルフェオの物語は、ギリシア神話のオルフェウスの物語に、ケルトの伝承が混ざってできあがったものだそうです。オルフェウスは妻をもとめて死の国へおもむきますが、サー・オルフェオは不思議な国(妖精の国)を訪れます。ル・カインの装飾的な絵は、ケルトの文様で装飾された「ケルズの書」という古い手書きの聖書を参考にしたそうです。訳文も物語にあわせて古風な味わいのものになっています。小学校中学年向き。

0 件のコメント:

コメントを投稿