2011年6月1日水曜日

フルダー・フラムとまことのたてごと

「フルダー・フラムとまことのたてごと」(ロイド・アリグザンダー/作 エヴァリン・ネス/絵 神宮輝夫/訳 評論社 1980)

フルダー・フラム王は、いさましい物語をうたって歩く、吟遊詩人になりたいという願いがありました。古い本を読み、指が腫れあがるほど竪琴の練習をした王様は、仲間にしてもらうために、詩人組合のところにでかけていきました。「なんなりとお試しなされ!」と、王様は自信たっぷりにいいましたが、詩人の長や組合の詩人たちがあれこれ訊くと、おぼえたことはひとつ残らずぱっと飛び散ってしまいました。あげくの果てに、竪琴が手から滑り、こなごなに砕けてしまいました。

すっかり気を落としてしまった王様に、詩人の長は、ひとつの竪琴をさしだします。「あなたはまだまだ勉強しなくてはなりません。この竪琴なら力になってくれるでしょう」。その美しい竪琴は、指がふれるだけで、うっとりするようなメロディが流れでてきます。「これで実力がだせる」と、すっかりご機嫌になった王様は旅にでかけるのですが──。

少々お調子者のフルダー王のお話です。作者のロイド・アリグザンダーは、「プリデイン物語」(評論社 1977)や「人間になりたがった猫」(評論社 1977)といった児童文学で高名です。ちなみに本書は、「プリデイン物語」の別巻の2巻目に当たります。このあと、王様はいろいろと立派なおこないをするのですが、それを大げさにいうたびに、竪琴の糸が切れてしまい──と、物語は続きます。絵は、どんな技法なのかわかりませんが、3色をじつにたくみにつかったもの。「プリデイン物語」を知らなくても楽しめる、じつにユーモラスな読物絵本です。小学校中学年向き。

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