2011年5月30日月曜日

雪原の勇者












「雪原の勇者」(スターラ・ソーズソン/再話 リーザ・ルンガ‐ラーセン/文 メアリー・アゼアリアン/絵 千葉茂樹/訳 BL出版 2004)

昔、ノルウェーにビルケバイネルと呼ばれる勇猛果敢な戦士たちがいました。ほとんどは貧しい農民で、いくさへいくときは高価なよろいかぶとなど身につけず、白樺の皮をすそに巻きつけるだけで(ビルケバイネルというのは「白樺の足」という意味)でかけました。王に忠誠を誓うビルケバイネルは、バーグラーと呼ばれる連中をさげすんでいました。バーグラーは王に対抗する大金持ちの貴族やいんちき聖職者からなる一派でした。

さて、1206年のクリスマスイブ、ビルケバイネルでもある村の長の小さな小屋に、幼子を胸に抱いたひとりの女性がやってきました。それは、インガ妃とホーコン王子でした。王の死後3週間目に生まれた王子は、自分たちに都合のよい王を望むバーグラーに殺されたと思われていたのですが、じつはシラ・トロンドという人物にかくまわれていたのでした。しかし、バーグラーの勢力は強まり、追っ手は近づきつつあります。そこで、8人のビルケバイネルたちが護衛につき、バーグラーの裏をかいて山をこえ、たくさんのビルケバイネルの頭領がいる北のニダロスを目指すことになりました。

スキーをはいた一行は、吹雪のなかを進み、大変な苦労ののちニダロスにたどり着きます。後半は、王子がほんとうの王子であることを証明するために、インガ妃が「焼き鉄のさばき」を受けるエピソードへと続きます。

副題は「ノルウェーの兵士 ビルケバイネルの物語」。巻末の作者はしがきによれば、王子の生涯を描いた記録、「ホーコン・ホーコン・ソンズ・サーガ」をもとに絵本にしたそうです。版画に彩色をほどこした絵が、歴史ものの雰囲気をよくかもしだしています。この王子救出の物語が、のちにクロスカントリーの由来となったということです。小学校中学年向き。

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