2011年1月31日月曜日

三びきのやぎのがらがらどん












「三びきのやぎのがらがらどん」(マーシャ・ブラウン/絵 せたていじ/訳 福音館書店 1979)

昔、3匹のヤギがいました。名前はどれも、がらがらどんといいました。ある日、3匹は太ろうと、山の草場へむかいました。すると、谷にかかった橋の下にトロルがすんでいました。一番はじめに、小さいヤギのがらがらどんが、かたことかたことと橋を渡ると、「だれだ、おれの橋をかたことさせるのは」と、トロルが怒鳴りました。「どうか食べないでください。少し待てば2番目のヤギのがらがらどんがやってきます」と、小ヤギはこたえました。

このあと、2番目のヤギのがらがらどんが橋を渡り、そして大きいヤギのがらがらどんがトロルと対決します。

すでに古典となった傑作絵本です。マーシャ・ブラウンの描く大きなヤギのがらがらどんは、勇ましく、大変な迫力です。また、調子のいい文章は、瀬田貞二さんの名訳でしょう。大きなヤギのがらがらどんのセリフを、ひとつ引用してみましょう。

「こっちにゃ 二ほんの やりが ある。 これで めだまは でんがくざし」

お話会の定番絵本の一冊です。小学校低学年向き。

2011年1月29日土曜日

しょうぼうねこ












「しょうぼうねこ」(エスター・アベリル/作 藤田圭雄/訳 文化出版局 1993)

黄色いネコのピックルズは、アパートの裏庭にすんでいました。前足はすごいパンチをもっていて、ピックルズはそのパンチで、なにか素敵なことをしてみたいと思っていました。でも、ピックルズは裏庭に入ってくる子猫たちを追いかけてばかりいました。それはつまらないことでしたが、ピックルズにはそれだけしかすることがありませんでした。

ある日、ピックルズは高い木に登って降りられなくなってしまい、消防士のジョーに助けられます。それから消防署で暮らしはじめ、柱を滑り降りる練習や、自動車に飛び乗る練習、それに火事のときホースを前足で押さえて、消防士が水をかけるのを手伝ったりして、立派な消防士の一員になります。

「黒ネコジェニーのおはなし」(福音館書店 1982)の登場人物、消防ねこのピックルズの活躍をえがいた読物絵本です。乱暴者だったピックルズが、立派な消防ねこになる姿には、思わず感動をおぼえます。小学校低学年向き。

2011年1月27日木曜日

ジブヤとひとくいドラ

「ジブヤとひとくいドラ」(A.ラマチャンドラン/作 きざきまろい/訳 福武書店 1982)

ジャングルにかこまれたインドの村に、風のように馬を走らせ、だれよりも矢を射るのがうまい、ジブヤという男が住んでいました。年老いたかしらが世を去り、ジブヤが新しいかしらになったある晩、村に大きな人食いドラがあらわれました。人間の味を知ったトラは、何度も襲ってくるにちがいありません。「おかしらならば、おれたちを守ってくれ」と、村人からいわれたジブヤは、弓矢をとり、馬に飛び乗っていいました。「わたしはこれから旅にでる。人食いドラを倒すまでもどらぬつもりだ」

旅にでたジブヤは、大きな雄牛を倒し、その角で角笛をつくります。田んぼにいき、呪文をとなえてその角笛を吹くと、大蛇があらわれます。大蛇から助言を得たジブヤは、5つの丘に立つ木から、5本の矢をつくり、人食いドラにいどみます。

インドにつたわる勇者ジブヤについての絵本です。ジブヤが人食いドラを倒すまでの出来事が、不思議に満ちた雰囲気のなか語られます。5つの丘には、それぞれ主がいるのですが、ジブヤはうまく主をだし抜き、矢を手に入れていきます。エピソードは豊富で、かつ彩りに富んでいます。

カバー袖にある文章によれば、本書はウォルリ族の美術作品、「ジブヤ・ソマ・マセ」にヒントを得てつくられたそうです。絵も、おそらくウォルリ族のものを模したのではないかと思われます。その絵は、勇者の物語としては、大変抽象的ですが、お話の面白さがそれを大いに補っています。小学校低学年向き。

2011年1月26日水曜日

こぶじいさま









「こぶじいさま」(松居直/再話 赤羽末吉/画 福音館書店 1980)

昔、あるところに、額に大きなこぶのあるじいさまがいました。ある日、山の木を切りにいって、日が暮れて帰れなくなってしまったじいさまは、山の神様のお堂に泊まることにしました。すると、夜中ごろになって、山奥から大きな鬼や小さな鬼どもが大勢やってきて、お堂のまわりをとり巻き、うたい、踊りはじめました。

じいさまは、はじめのうちは怖くて、お堂のすみから黙ってみているだけでしたが、踊りの調子がだんだん面白くなってくると、じっとしていられなくなり、とうとうお堂から飛びだして、鬼どもと一緒に踊りだします。

ご存知、昔話「こぶとりじいさん」をもとにした絵本です。鬼どもが踊る場面では、こんな歌がうたわれます。

「くるみは ぱっぱ、ぱあくずく、
 おさなぎ、やぁつの、おっかぁかぁ、
 ちゃぁるるぅ、すってんがぁ、
 一ぼこ、二ぼこ、三ぼこ、四ぼこ…」

読み聞かせに使うには、ずいぶん練習がいりそうです。赤羽末吉さんは、ここでも素晴らしい仕事をしています。小学校低学年向き。

2011年1月25日火曜日

おばけパーティ










「おばけパーティ」(ジャック・デュケノワ/作 おおさわあきら/訳 ほるぷ出版 1995)

おばけのアンリが、友だちを晩餐会に招待しました。特製のカクテルもみんなが飲むと、みんなはそれぞれのカクテルの色になってしまいました。カボチャのスープを飲むとカボチャ色に、サーモンを食べるとサーモン色に、サラダやチーズを食べると、サラダやチーズっぽい姿になってしまい──。

このあと、アンリは今夜の特別メニューを振る舞います。さて、食べたみんなはどうなってしまうでしょう。

おばけのアンリが、おばけの友人たちをお城に招待するという絵本です。友人たちは、飲んだり食べたりするたびに、色が変わったり姿が変わったりするのですが、まったく動じないところがおかしいです。1ページに文章が1、2センテンスほどしかないので、次つぎと読みすすめられます。作者はフランスのひと。表紙をひらいたところから、最後のページまで楽しめる一冊です。なお、この気のいいおばけたちはシリーズになっています。小学校低学年向き。

2011年1月24日月曜日

くまのコールテンくん











「くまのコールテンくん」(ドン=フリーマン/作 まつおかきょうこ/訳 偕成社 1990)

大きなデパートのおもちゃ売場にいる、くまのコールテンくんは、ほかのおもちゃたちと同じように、いつもだれかがきて、うちに連れていってくれないかなあと思っていました。ある朝、ひとりの女の子が、コールテンくんの目をじっとのぞきこんで、「ねえみて、ママ! あたし、ずっと前からこんなくまがほしかったの」といいました。でも、お母さんは首を振って、「きょうはだめよ。もうお金をたくさん使っちゃったから。それに、これ新品じゃないみたい。吊りひものボタンがひとつとれてるわ」といいました。

その晩遅く、コールテンくんはとれたボタンがどこかに落ちていないか探しにいきます。

ぬいぐるみのくま、コールテンくんのお話です。コールテンくんはボタンをさがしているうちに、うっかりエスカレーターに乗ってしまいます。エスカレーターにはこばれながら、コールテンくんはこう思います。「これ、山かな? ぼく、ずっと前から山に登ってみたいなあって思っていたんだ」。この、「ずっと前から…」がくり返されることにより、作品に深みをあたえています。ドン・フリーマンの絵のうまさはいうまでもありません。可愛らしく感動的な、傑作絵本の一冊です。コールデコット賞オナー賞受賞。小学校低学年向き。

2011年1月21日金曜日

ポケットのないカンガルー












「ポケットのないカンガルー」(H.A.レイ/絵 エミイ・ペイン/作 にしうちミナミ/訳 偕成社 1994)

お母さんカンガルーのケイティには、ほかのお母さんたちのように、お腹にポケットがありませんでした。そのため、小さなぼうやのフレッドを、どこにも連れていってやることができませんでした。あるとき、ケイティは、ほかの動物のお母さんはどうやって子どもをはこんでいるのか聞いてみることにしました。まず、ワニに聞いてみると、「そりゃあ、おんぶよ」と、ワニのお母さんはいいました。さっそく、ケイティは真似をしてみましたが、カンガルーにおんぶは無理でした。

ケイティはいろんな動物たちに話を聞いたあげく、物知りのフクロウに相談してみることにします。すると、フクロウは、「町にいってポケットを買えばいいじゃろ」とこたえます。そこで、ケイティとフレッドは町へ出かけます──。

「おさるのジョージ」シリーズで高名なH・A・レイによる絵本です。レイのユーモラスで明るい絵柄が、物語にぴったりあっています。町にでたケイティは、きっぷのいいおじさんに出会いますが、このおじさんもレイの手によって、じつに生き生きと描かれています。ストーリーは大変盛り上がり、最後は奇想天外なハッピーエンドが待っています。小学校低学年向き。

2011年1月20日木曜日

ティッチ












「ティッチ」(パット・ハッチンス/作 いしいももこ/訳 福音館書店 1975)

ティッチは小さな男の子でした。姉さんのメアリは、ティッチよりちょっと大きくて、兄さんのピートはずっと大きな子でした。ピートは、とっても大きな自転車をもっていました。メアリも、大きな自転車をもっていました。でも、ティッチのもっていたのは、小さな三輪車でした。

小さなティッチのお話です。兄さん、姉さんにいつもかなわないティッチですが、最後ふたりをびっくりさせます。

パット・ハッチンスの代表作。表現の簡潔さと、その効果には目を見張るものがあります。続編に「ぶかぶかティッチ」(福音館書店 1984)、「ティッチはきれいずき」(童話館 1994)が出版されています。小学校低学年向き。

2011年1月19日水曜日

きこえるきこえるふゆのおと












「きこえるきこえるふゆのおと」(マーガレット・ワイズ・ブラウン/作 チャールズ・G・ショー/絵 よしがみきょうた/訳 小峰書店 1998)

ある日、子犬のマフィンは葉っぱが風に散っていくのをみました。外は冷たく静かな夜になり、黒い枝が窓ガラスを叩いて、ヒューヒューという風の音が聞こえてきました。大きな雨粒も落ちてきました。そのとき、道のむこうから、こんな音が聞こえてきました。《ノシッ ノシッ ザクザク》。いったいなんの音でしょう。

次の日、マフィンはかすかな音を聞きます。それは、ひとの息づかいのような柔らかい音です。お月さまにむかって飛んでいく大きな風船の音でしょうか。きらきら光るガラスの玉が砕けて100個の金色のかけらになった音でしょうか。それとも、大きなチョウチョウが夜空を舞う音でしょうか。それは、マフィンが生まれてはじめて聞く音です。いったいなんの音?──。

冬の音についての絵本です。暖炉で炎が燃える音、窓の外をゆく車の音、リンゴを食べる音など、さまざまな音が詩的な文章とともにとり上げられます。後半は、マフィンがはじめて聞く音についての、問いと答えで構成されています。

「ぞうが気持ちよさそうにハンモックでお昼寝してる音? おおまちがい。だれかが内緒話をしているの? ううん」

といった具合。
絵は鮮やかでグラフィカルなもの。鮮やかにもかかわらず、冬の感じがよくでています。小学校低学年向き。

2011年1月18日火曜日

ベーコンわすれちゃだめよ!










「ベーコンわすれちゃだめよ!」(パット=ハッチンス/作 わたなべしげお/訳 偕成社 1996)

男の子がお母さんからお使いを頼まれました。

「生まれたての玉子が6個と、
 お茶にいただくケーキと、
 ナシをひと山買ってきてね。
 それからベーコン忘れちゃだめよ」

男の子はかごを下げ、犬をつれて買い物にいくのですが──。

男の子は道みち、お母さんに頼まれたものを思いだしながら買い物にでかけます。が、つい見かけたものと混同してしまいます。

テーマ、絵柄ともに、いつも素晴らしく明快なハッチスンによる絵本です。男の子が出会ったものに気をとられ、つぎつぎに思いちがいをしていくさまが面白くえがかれています。お母さんから買い物を頼まれた次のページから、男の子は早くも「玉子」と「ダイコン」をとりちがえてしまいます(その場面には女のひとの足がえがかれているので、おそらく原文では“egg”と“leg”が入れ替わってしまったのでしょう)。後半、男の子は頼まれものを次つぎと思い出します。うまくいくかなと思うのですが、あと一歩およびません。小学校低学年向き。

かしこいモリー










「かしこいモリー」(ウォルター・デ・ラ・メア/再話 エロール・ル・カイン/絵 中川千尋/訳 ほるぷ出版 2009)

昔、あるところに年をとった木こりがいました。ある日、木こりは末の3人の娘に糖蜜パンをひと切れずつ渡すと、森へたきぎをとりにいかせました。3人の娘は、森の奥へ奥へと入っていき、帰り道がわからなくなってしまいました。日が沈むころ、木々のむこうに小さな明かりをみつけ、3人のなかで飛び抜けてかしこい末娘のモリーが、その家にいって戸を叩きました。でてきた女のひとに、「どうか食べものをめぐんでください」とモリーがいうと、女のひとはいいました。「ここは人食い大男の家だよ。うちのひとが帰ってきたら、おまえさんたちこそ食べられてしまうさ」

このあと、大男が帰ってくるのですが、モリーが機転を利かせ、3人はうまく家から逃げだします。また、森をさまよって、こんどは立派な城にたどり着き、モリーはこれまでのことを王様に話します。すると、王様は、もしモリーが大男の家にもどって枕元にかけてある剣をとってきたなら、モリーの一番上の姉さんと、一番上の王子を結婚させてやろうといいだします──。

イギリスの昔話をもとにした絵本です。訳者あとがきによれば、もとの昔話は「おはなしのろうそく」の1巻に収録されているそうです。読みくらべてみると、デ・ラ・メアによる再話は描写が増え、おかしみが増しています。エロール・ル・カインによる絵は、装飾的で、舞台の背景のよう。デ・ラ・メアとル・カインにより、絵本版のモリーはよりチャーミングになっています。小学校中学年向き。

2011年1月14日金曜日

かさどろぼう












「かさどろぼう」(シビル・ウェッタシンハ/作・絵 いのくまようこ/訳 徳間書店 2007)

まだカサというものをみたことがなかった村に、キリ・ママというおじさんがいました。ある日、キリ・ママおじさんは、はじめて町へでかけ、はじめてカサというものを目にしました。それは、強い日差しを避けるために、みんながさしていたカサでした。「なんて、きれいで便利なものだろう」と、すっかり感心したキリ・ママおじさんは、お店に入り、さんざん迷ったあげく、自分も1本のカサを買いました。

さて、カサを買ったキリ・ママおじさんは、村のひとたちに見せびらかしたくてしかたがありません。でも、バスが村に着いたときは、もう暗くなっていました。そこで、キリ・ママおじさんは、カサを塀のかげに隠して、バス停のそばのコーヒー屋さんに入りました。ところが、店をでると置いておいたはずのカサがなくなっていました──。

このあと、キリ・ママおじさんは、何度も何度も町へいってカサを買ってきます。が、そのたびにカサはなくなってしまいます。いったい、カサ泥棒はだれなのでしょう?

にげだしたひげ」や「ねこのくにのおきゃくさま」で有名なスリランカの絵本作家、ウェッタシンハによる絵本です。絵は、太い描線でえがかれたユーモラスなもの。このあと、キリ・ママおじさんは、カサに紙切れを仕込んでおき、地面に散らばったそれをたどって泥棒を追うのですが、そのあと思いがけない展開が待っています。小学校低学年向き。

2011年1月13日木曜日

のら犬ウィリー












「のら犬ウィリー」(マーク・シーモント/作 みはらいずみ/訳 あすなろ書房 2001)

きょうは、みんなでピクニックにいきました。その子犬に最初に気がついたのはお父さんでした。「ワンちゃん、どうしたの?」と、お母さんがいいました。「おなかすいてるんじゃない?」と、おねえちゃんがいいました。「あそびたいんだよ、きっと」と、弟がいいました。子どもたちは、子犬にウィリーという名前をつけて、一緒に遊びました。

お利口で、ひとなつこいウィリーと遊んでいると、あっというまに時間がたってしまいます。でも、自分のうちがあるかもしれないウィリーを、うちに連れて帰ることはできません。みんなは、ウィリーを置いてうちに帰るのですが──。

「ぼくはめいたんてい」シリーズ(マージョリー・W・シャーマット 大日本図書)のさし絵などで著名な、マーク・シーモントによる傑作絵本です。このあと、みんなはウィリーのことばかり考えて一週間をすごし、つぎの土曜日、またピクニックにいってみると…と物語は続きます。カバー袖の文章によれば、この絵本はマーク・シーモントが1983年に友人のサッサ・レイコから聞いた実話から生まれたということです。シーモントはそのあと、15年も構想を練り続けたそう。絵は水彩。文章と絵の関係がじつにみごとです。小学校低学年向き。

2011年1月12日水曜日

なんてこったい

「なんてこったい」(やまのうちきよこ/ぶん あさのたけじ/え 福武書店 1982)

ある日、男が山の木を切りにでかけると、どこからか苦しそうな声が聞こえてきました。声は、大きな岩の下から聞こえてきます。男は木を切り倒し、岩のそばまで引きずっていくと、木の先を岩の下に突っこんで、もう片方の先にぶらさがりました。すると、岩がぐらりとうごいて、その下からぬうっと竜があらわれました。

岩の下からでてきた竜は、「ここに百年とじこめられて腹ぺこだ」と、男を食べようとします。「助けたおれを食うだって。なんてこったい、そりゃひどいよ」と、男がいうと、「世の中ってのはそんなものさ」と、竜はこたえます。そのとき、たまたま通りがかった犬や馬やキツネに、男は「世の中ってのはひどいことばかりじゃないよな」とたずねます──。

ノルウェーの昔話をもとにした絵本です。竜に食べられそうになったと思いきや、通りがかった動物たちに、「世の中ってひどいことばかりじゃないよな」と同意をもとめる展開に、なんとも可笑しみがあります。しかも、動物たちはみんな「世の中はうまいぐあいにはいかない」とこたえるのです。

話はこれでは終わりません。キツネのミッケルの助けにより危機を脱した男は、ひと晩ミッケルをニワトリ小屋に泊めてやります。その晩ミッケルはたらふくニワトリを食べるのですが…と、物語は途中から、ミッケルの話になって続きます。絵は、ストーリーと同様に、おおらかで力強いもの。原話はもっと長い話だということですが、絵本化にさいし、絵にあわせて刈りこんだと、カバー袖で山内さんは記しています(ちなみに、元の話は「ノルウェーの昔話」(福音館書店 2003)に「世の中のお返しなんて似たようなもの」というタイトルで収録されています)。小学校低学年向き。

2011年1月11日火曜日

ゆきむすめ









「ゆきむすめ」(内田莉莎子/再話 佐藤忠良/画 福音館書店 1980)

あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。子どもがいなかった2人は、それをたいそうさびしく思っていました。冬のある日、子どもたちが元気いっぱいに雪あそびをしているのをみていた、おじいさんとおばあさんは、庭にでて、雪で可愛らしい娘をつくりました。すると、突然娘はにっこり笑って、ひと足ふた足、雪のなかを歩きだしました。

雪むすめは、みるみるうちに、大きく、かしこく、美しくなっていきます。でも、春がきて、子どもたちが楽しそうに外を駆けまわっていても、うちに閉じこもって遊びにいこうとはしません。夏になり、女の子たちが森へ遊びにいこうと誘われた雪むすめは、おじいさんやおばあさんにもすすめられ、仕方なくでかけるのですが──。

雪でできた女の子のお話です。佐藤忠良さんの絵は、おそらくクレパスと水彩でえがかれたもの。女の子たちがとても生き生きとえがかれています。幻想的で少しもの悲しく、でもこれ以外考えられないというラストが待っています。似たモチーフを扱った「ゆきのねこ」などと読みくらべてみるのも面白いかもしれません。小学校低学年向き。

2011年1月7日金曜日

なにをたべたかわかる?












「なにをたべたかわかる?」(長新太/作 絵本館 2003)

気持ちのいい朝、海で釣りをしていたネコは、大きな魚を釣り上げました。すごく大きな魚だったので、釣り竿を置いて、肩にかついでいきました。その様子を、ネズミがびっくりして見ていると、ネズミは魚に食べられてしまいました。でも、ネズミが食べられてしまったことに、ネコはぜんぜん気がつきません──。

このあとネコがかついだ魚は、ウサギ、犬、タヌキ、キツネ、ブタ、ゴリラをぺろりと食べてしまいます。

いろいろ食べたので、魚はものすごく大きくなるのですが、それに一向に気がつかないで、重そうに魚をかついでいるネコがおかしいです。絵は、おそらく黒とオレンジのクレヨンで描いたもの。ラストはびっくり。子どもに読んでみると、目を丸くします。小学校低学年向き。

2011年1月6日木曜日

サティさんはかわりもの












「サティさんはかわりもの」(M.T.アンダーソン/文 ペトラ・マザーズ/絵 今江祥智/訳 遠藤育枝/訳 BL出版 2004)

エリック・サティは1866年、フランスの海ぞいの村、オンフールに生まれました。小さいときから音楽が大好きで、演奏と作曲を学ぶために学校にかよいました。サティの一生の望みは、それまでの決まりごとにとらわれない、まったく新しい音楽を生みだすことでした。でも、サティの新しい音楽は、たいていのひとに嫌がられました。

友だちに連れられていったカフェ「黒猫亭」で、サティはピアノを弾くようになります。「黒猫亭」は芸術家のたまり場で、サティの風変わりな音楽をみんなは嫌がらずに聞いてくれました。サティはここで、のちに一番有名になったピアノ曲「ジムノペディ」を演奏します。

風変わりな音楽をつくった風変わりな音楽家、エリック・サティの伝記絵本です。このあと、ひと並に恋をしたり、でもサティがカンシャクもちだったために別れたり、決まりを破るためには決まりを知らなければならないと、一度はやめた音楽学校に39歳で入り直して、こんどはちゃんと卒業したり、「バラード」「本日休演」といった奇妙キテレツなバレエを上演したりといった、サティの一生が語られます。絵は、くせのないおだやかな印象の水彩画。サティが亡くなったのは、1925年7月1日。お葬式の日、教会では結婚式もおこおなわれていたそうです。それは大変サティ風のことだったと、その場面はこんな風に記されています。

「サティの音楽そっくりに
 うれしさだけでも悲しさだけでもない、
 うれし悲しいひとときだった」

読むと、サティの音楽が聞きたくなる一冊です。小学校高学年~大人向き。

2011年1月5日水曜日

やかましい!










「やかましい!」(シムズ・タバック/絵 アン・マクガバン/文 木坂涼/訳 フレーベル館 2008)

昔むかし、小さな古い家に、ひげもじゃのおじいさんが住んでいました。ある日、おじいさんのベッドがきーきーいいだしました。床もみしみし、葉っぱは屋根をひゅんひゅんこすっています。それがあんまりやかましいので、おじいさんは村一番のもの知り博士のところに相談にいきました。すると博士はいいました。「それなら、いい方法があるぞ。ウシと一緒に暮らすのじゃ」。

もちろん、ウシと暮らしても静かにはなりません。そこで、またもの知り博士を訪ねると、博士はこうこたえます。「それならロバじゃ。ロバと一緒に暮らすのじゃ」。このあとはくり返しです。おじいさんは、ヒツジやニワトリや犬や猫と暮らすことになり──。

小さな物音がうるさく感じられるようになってしまったおじいさんのお話です。絵は、ストーリーをよくつたえるユーモラスなもの。最後まで読むと、「なるほどこういうことだったのか」と、もの知り博士の知恵に感心します。同じ題材を扱った絵本に「きつきつぎゅうぎゅう」(ジューリア・ドナルドソン/文 アクセル・シェフラー/絵 ながくぼれいこ/訳 ほるぷ出版 1995)があります。こちらの主人公はおばあさんです。小学校低学年向き。

2011年1月4日火曜日

タブスおばあさんと三匹のおはなし










「タブスおばあさんと三匹のおはなし」(ヒュー・ロフティング/作 南條竹則/訳 集英社 2010)

昔むかし、草深い小さな農場に、たいそう年をとったタブス夫人というおばあさんが、犬のパンク、アヒルのポンク、それにブタのピンクと一緒に住んでいました。おばあさんは長年農場に暮らしていましたが、農場のもち主ではありませんでした。もち主はロンドンにいる、一度も農場にきたことのない男のひとでした。ある夏の終わり、もち主の甥だという若者がロンドンからあらわれて、おばあさんと、パンクとポンクとピンクは、長年楽しく暮らした家をでていかなければならなくなりました。

家を追いだされたおばあさんは途方に暮れてしまいます。3匹は松露とマスのフライのごちそうをつくって、おばあさんに食べてもらおうとしますが、おばあさんは悲しみのあまり手をつけず、3匹が用意してくれた洞穴の寝床で丸くなるばかりです。そこで、3匹は「あのとんま」を農場から追いだしてやろうと決意します──。

「ドリトル先生」シリーズの作者、ロフティングによる読物絵本です。「ドリトル先生」同様、やっぱり動物たちが大活躍します。ストーリーはこのあと、水ネズミの王様スキークや、ツバメの女王ティリー・トウィターの助けを得て、地主の甥を追いだす話へと続きます。ロフティングの達者だったり、稚拙だったりする絵を、レイアウトがよく支えています。小学校中学年向き。