2010年11月19日金曜日

ふしぎなかけじく












「ふしぎなかけじく」(イヨンギョン/作 おおたけきよみ/訳 アートン 2004)

昔、チョンウチという道士が住んでいました。ある日、山のふもとからひとの泣き声が聞こえてきたのでいってみると、荒れはてた家がありました。目の見えないお母さんと暮らしているハンジャギョンという男が、お父さんがおととい亡くなり、お腹をすかせて倒れているのでした。そこで、チョンウチ道士は袖から掛け軸をとりだしていいました。「この掛け軸を部屋にかけて倉番を呼ぶがよい。最初の日には100両をもらってお父上を弔いなさい。次の日からは、1日に1両ずつもらえば、なんとか食べていけるだろう」

さて、チョンウチ道士にいわれたとおり、ハンジャギョンが掛け軸をかけてみると、なかから倉番の男の子があらわれます。男の子がくれた100両でお父さんのお葬式をあげ、その後1日1両ずつもらうお金で、お母さんにもよい暮らしをさせることができたハンジャギョンはとても幸せになります。ですが、ある日、市場にでかけると、落ちぶれた大金持ちが9万坪の畑をたった100両でたたき売りしているという話が耳に入り──。

お金をだしてくれる不思議な掛け軸のお話。このあと、100両あれば地主になれると思ったハンジャギョンは、倉番をおどかし、掛け軸のなかにある倉に入りこみます。もちろん、欲をかいたハンジャギョンは、相応の罰を受けるはめになります。カバー袖にある訳者解説によれば、本書は韓国の古典小説「田禹治傳」(チョンウチでん)をもとに絵本化したものだそう。絵は水墨画風。お調子者で、人間味あふれるハンジャギョンがじつに表情豊かにえがかれています。小学校中学年向き。

0 件のコメント:

コメントを投稿