2010年4月6日火曜日

ふしぎなやどや












「ふしぎなやどや」(長谷川摂子/文 井上洋介/絵 福音館書店 1990)

あるところに、チョウという若者がいました。チョウはあの町この村へと流れ歩く旅商人(たびあきんど)でした。ある日の夕方、板橋(はんきょう)という町についたチョウは、「この町で泊まるなら、三娘子(さんじょうし)の宿がいい。しっかり者のおかみさんで、ロバをたくさん飼っている。困っている旅人に安く売ってくれたりする」という、仲間の話を思い出し、三娘子の宿に泊まることにしました。

三娘子は目元のきりりとした、美しいおかみさんでした。その夜、チョウが寝つかれないでいると、となりの部屋で三娘子が手箱から、人形や牛をとりだすのがみえました。三娘子がぷーっと水を吹きかけると、人形たちはたちまちうごきだし、土間をたがやしてソバを育て、ソバ粉をつくりました。そして、三娘子はソバ粉からソバもちをこしらえました。翌朝、三娘子がソバもちを客に食べさせると、客はたちまちロバになってしまいました。

さて、それをみたチョウはある決心をし、ひと月あまりののち、ふたたび三娘子の宿を訪れます──。

中国唐代の伝奇小説集「太平広記」におさめられた、「板橋三娘子」をもとに再話した絵本です。文章はタテ書きの読物絵本。井上洋介さんの画風が話によくあっています。三娘子は一見魔女のようですが、なんとなく憎めません。小学校中学年向き。

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