2010年3月10日水曜日

鬼の首引き












「鬼の首引き」(岩城範枝/文 井上洋介/絵 福音館書店 2006)

昔むかし、あるところに力もちの若者がいました。都への旅の途中、ひろびろとした野原を歩いていると、急にあたりが暗くなり、ぬっと大きな鬼があらわれました。鬼は若者をつかんで頭から食おうとしましたが、「わしにはひとり姫がおるが、まだひとを食わせたことがない」と思い、若者に姫を食わせることにしました。

鬼の世界では、はじめてひとを食べることを「お食い初め」といいます。鬼は姫に「お食い初め」をさせようとするのですが、恥ずかしがりやの姫は、なかなか若者が食べられません。「手から食おうか、足から食おうか、それともがぶりと頭から?」と、うたいながら若者に近づいていくのですが、若者に扇でぽんと叩かれると、「痛い痛い、わたしをたたいた」と、父親の鬼にかけよる始末です。けっきょく、父親とその仲間の鬼たちが加勢をしにきて、若者と首引きの勝負をします。

狂言の「首引き」をもとにした絵本です。子煩悩の鬼と、箱入り娘の姫が、若者とくりひろげるやりとりがおかしいです。くり返しも楽しく、井上洋介さんの絵もよくあった、3拍子そろった一冊です。小学校低学年向き。

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