2009年11月30日月曜日

3びきのくま












「3びきのくま」(トルストイ/文 バスネツォフ/絵 おがさわらとよき/訳 福音館書店 1996)

女の子は森に遊びにでかけ、道に迷ってしまいました。ふと気がつくと、戸のあいた、小さな家がありました。のぞいてみると、だれもいません。そこで、女の子はなかに入ってみることにしました。

この家は、じつは3匹のくまが暮らす家。くまの家に入った女の子は、大中小それぞれの、おさじや椅子やベッドをみつけます。──という、ご存じ「3びきのくま」のお話。古くから読みつがれている絵本は、無駄がなく、均整がとれ、完璧な印象をあたえるものですが、この絵本は完璧中の完璧といえるでしょう。小学校低学年向き。

2009年11月28日土曜日

しちどぎつね












「しちどぎつね」(たじまゆきひこ/作 くもん出版 2008)

大阪の仲のいい2人連れ、喜六(きろく)と清八(せいはち)がお伊勢参りの旅にでてきました。途中お腹がすいた2人は畑のスイカを失敬しますが、まだ季節が早くてなかは真っ白。スイカを草むらに放ると、ちょうどそこに寝ていた狐の頭にごつんと当たりました。このキツネは、ひとに一度仇されたら、7度だまして返すという七度ギツネ。スイカをぶつけられたお返しに、七度ギツネはさっそく2人を化かしにかかりました。

上方落語「七度狐」をもとにした絵本です。落語では、2人は煮物屋(軽食堂)で「いかの木の芽和え」を失敬し、食べ終えたあとすり鉢を投げ捨てたら、それが七度狐に当たります。それが絵本では効果を考えて、スイカに変更されています。この絵本の付録「絵本のたから箱」という冊子には、制作の苦労話が載せられているのですが、それによると、作者がこの落語の絵本化を志してから、スイカを思いつくまで、20年近くたってしまったということです。

独特の味わいのある絵は、型染(かたぞめ)という、大変手間のかかる手法でえがかれたもの。話はおおむねセリフのやりとりで進んでいきますが、セリフのまえには発言者の絵をつけるという工夫がされています。また、ラスト近くに、七度ギツネに化かされた2人が、伊勢音頭をうたい踊るという場面があります。 じつに、落語絵本として出色の出来映えの一冊です。小学校中学年向き。

2009年11月26日木曜日

星どろぼう












「星どろぼう」(アンドレア・ディノト/文 アーノルド・ローベル/絵 やぎたよしこ/訳 ほるぷ出版 1980)

昔、山のてっぺんにある村に、ひとりの泥棒が住んでいました。泥棒は、空の星にさわりたくてさわりたくてたまりませんでした。そこで、はしごを空にかけ、星をひとつ残らずとってしまいました。いっぽう、空に星がなくなったので、村人たちはびっくりぎょうてん。星を盗んだやつは、月も盗もうとするにちがいないと、村人は月を守ることにしました。

その後、村人たちの予想どおり、泥棒は月を盗みにやってきて、村人に捕まってしまいます。さて、今度は星を夜空にもどさなくてはいけないのですが、これがうまくいきません。星は夜空にくっつかず、落ちてきてしまうのです。

夜空に星をもどす方法はじつに洒落ています。ラストも気が利いており、ローベルのあたたかい絵とあいまった素晴らしい読物絵本です。現在品切れ。小学校中学年向き。

2009年11月25日水曜日

きんぎょ












「きんぎょ」(ユ・テウン/作 木坂涼/訳 セーラー出版 2009)

ジェジェのおじいさんは森の奥の古い図書館ではたらいていました。ある日、飼っている金魚をつれて、おじいさんと図書館にいったジェジェは、本をみているうちに眠くなり、居眠りをしてしまいました。目を覚ますと、あたりはすっかり暗くなっていて、金魚がいなくなっていました。

あわてて金魚をさがしまわったジェジェは、本棚にちらりと尻尾をみつけます。そこで、金魚が消えた本をひらくと、不思議なことが起こります。このシーンは圧巻です。絵本でしか起こり得ない、不思議なことが起こります。幻想的な読物絵本です。小学校中学年向き。

2009年11月24日火曜日

ルピナスさん











「ルピナスさん」(バーバラ・クーニー/作 かけがわやすこ/訳 ほるぷ出版 1987)

ルピナスさんは、子どものころアリスという名前でした。海辺の町に住んでいて、夜になると、おじいさんから遠い国々のお話をしてもらいました。「大きくなったら私も遠い国にいく」とアリスがいうと、おじいさんがいいました。「もうひとつしなくてはならないことがあるぞ。世の中をもっと美しくするために、なにかしてもらいたいのだよ」。

大きくなったアリス(このころはミス・ランティアと呼ばれていました)は町の図書館ではたらきはじめます。そして、いろんな遠くの国にでかけるのですが、旅行先でけがをしてしまいます。海のそばの家で暮らすことにしたミス・ランティアは、いよいよおじいさんとの約束をはたすときがやってきたと思います。でも、いったいなにをすればいいのでしょう――。

ルピナスさんという、ひとりの女性の人生をえがいた物語絵本です。落ち着いた絵とともに語られるルピナスさんの人生は、波瀾万丈ではありませんが、品のある絵とともに深い感銘をあたえてくれます。小学校高学年向き。

2009年11月20日金曜日

たまごからうま












「たまごからうま」(酒井公子/再話 織茂恭子/絵 偕成社 2003)

あるところに、ダーという名前の怠け者の男がいました。歩くのもくたびれると思ったダーは、市場にいき、馬を買うことにしました。ところが、馬は高くてダーのもっているお金では買えません。すると、ひとりの男がよってきて、ダーにこうささやきました。「だんなさんにだけ特別安く、馬のたまごを売ってあげましょう」。

馬のたまごというのは、じつは大きなカボチャ。でも、すっかりだまされてしまったダーは、カボチャをうちにもって帰ろうとします。うちに着くまで必ずかついでいくようにといわれていたのですが、あんまり重いので途中でひと休み。すると、通りがかったキツネがカボチャにつまずき、カボチャはばかっと割れてしまいます。キツネのことを、たまごからかえった馬だと思ったダーは、逃げてゆくキツネを一目散に追いかけます。

物語と同じように絵も豪快です。夕焼けのなか、ダーがキツネを追いかける場面が、おかしくも美しい絵になっています。この後、キツネを見失ったダーは、サルを、そしてなんとトラを馬だと勘違いして追いかけます。原作はベンガルの民話。もとの話はジャッカルだそうですが、日本の読者に親しみやすいようにキツネにしたということです。ラスト、馬だと思ってトラの背にしがみつくところは、わが国の「むるやのもり」を思い起こさせます。小学校低学年向き。

まほうつかいバーバ・ヤガー










「まほうつかいバーバ・ヤガー」(松谷さやか/再話 ナタリー・パラン/絵 福音館書店 1987)

昔、あるところに年をとった両親と暮らす、ひとりの娘がいました。お母さんが亡くなってしまったので、娘には新しいお母さんがやってきました。でも、こんどのお母さんはとてもいじわるで、ある日お父さんの留守に、娘にこういいつけました。「わたしの姉さんのところへいって、針と糸をもらっておいで。ルバーシカ(ロシアの民族衣装)を縫ってあげるから」 ところが、お母さんの姉さんというのは、魔法使いのバーバ・ヤガーだったのです。

かしこい娘は、まず、やさしい自分のおばさんのところに相談にいきます。そのあと、バーバ・ヤガーのところにいき、バーバ・ヤガーが自分を食べようとしていることを知った娘は、おばさんの助言にしたがって逃げだします。ラストの展開は、ちょっと「3枚のおふだ」風。絵は落ち着いた、グラフィカルなもの。読み聞かせにむいている一冊です。小学校低学年向き。

2009年11月18日水曜日

チャンティクリアときつね












「チャンティクリアときつね」(ジェフリー・チョーサー/原作 バーバラ・クーニー/作 ひらのけいいち/訳 ほるぷ出版 1978)

昔、ある谷間の森の近くに、お母さんと2人の女の子が住んでいる一軒の家がありました。その家にはチャンティクリアというオンドリがいて、7羽のメンドリにかこまれて暮らしていました。ある明け方、チャンティクリアは猟犬のようなやつに襲われる夢をみて目を覚ましました。「こわくてこわくて息が止まりそうだった」とチャンティクリアがいうと、メンドリのパーレットがいいました。「ばかなことをいわないで。わたし、臆病者は大嫌いよ」 ところが、そのあととても恐ろしいことが起こったのです。

チャンティクリアの夢は正夢になってしまいます。森に住んでいる悪がしこいキツネが、ことばたくみにチャンティクリアをおだてあげ、油断したところをぱくりと食わえてしまうのです。キツネは森に逃げようとしますが、そこでお母さんや女の子や家畜たちによる、大追跡がはじまります。

原作はチョーサーの「カンタベリー物語」にある「修道女につきそう司祭の話」。キツネとチャンティクリアのかけあいが、じつに生き生きしています。また、当時の風俗をそのままに描いたクーニーの絵がとても素晴らしいです。1958年のカルデコット(コールデコット)賞受賞作。小学校低学年向き。

2009年11月17日火曜日

どろにんぎょう












「どろにんぎょう」(内田莉莎子/文 井上洋介/絵 福音館書店 1995)

おじいさんが泥土で大きな人形をつくりました。とてもよくできたので、窓の外におき、おばあさんにみせました。すると、おどろいたことに、泥人形は立ち上がって、どんんどしんと足音を立ててうちになかに入ってきました。そして、泥人形はおじいさんとおばあさんを呑みこんでしまいました。

このあと、外にでた泥人形は、出会ったひとたちをどんどん呑みこんでいきます。3人の漁師をのせた舟なんてものまで呑みこんでしまうので驚くかぎり。井上洋介さんの絵も豪快で、物語によくあっています。小学校低学年向き。

2009年11月16日月曜日

オーパルひとりぼっち












「オーパルひとりぼっち」(オーパル・ウィットリー/原作 ジェイン・ボルタン/編 バーバラ・クーニー/絵 やぎたよしこ/訳 ほるぷ出版 1994)

ほんとうのお母さんとお父さんが天国にいってしまったオーパルは、ある家族の養女になりました。新しいお母さんは、オーパルに、たきぎとりやバターづくり、洗濯など、たくさんの仕事をいいつけます。でも、オーパルには友だちがいます。ねずみのメンデルスゾーンや、犬のホラチウス、近所に住む〈だいすきなひと〉。悲しくなると、ラファエルという名の木と話します。

孤独な女の子が主人公の絵本です。動物たちにみな立派な名前がついているところなど、あどけなさと孤独さを感じさせます。クーニーのえがく静かな絵が、文章とともに作品を忘れがたいものにしています。読物絵本。小学校中学年向き。

本書は、原作者のオーパルが5、6歳ころつけていた日記をもとにしてつくられたそうです。オーパルは日記を秘密の場所に隠しておいたのですが、あるとき、義理の姉さんにみつかり、びりびりに破られてしまいました。それでもオーパルは、破られた紙切れを箱にいれてとっておきました。大人になり、なにかの拍子にこの日記の話をしたところ、ひとりの出版人がこの日記をみたいといったので、オーパルは9ヶ月かけて紙切れをつなぎあわせました。出版人は日記をたいへん気に入り、一冊の本として出版したそうです。

2009年11月13日金曜日

とうもろこしおばあさん









「とうもろこしおばあさん」(秋野和子/再話 秋野亥左牟/画 福音館書店 2005)

どこからか、ひとりのおばあさんがやってきました。おばあさんは、どこの村でも泊めてもらえませんでしたが、このアリゲーター村では、ひとりの若者に泊めてもらうことができました。翌朝、男たちが野牛を狩りに、女たちが芋を掘りにでかけると、おばあさんはおいしいパンをつくって村の子どもたちに食べさせました。村に帰り、子どもたちの話を聞いた酋長は、大人たちにも食べさせてくれるように、おばあさんに頼みました。その夜は、大宴会がはじまりました。

おばあさんがつくったのは、とうもろこしからつくったパン。でも、おばあさんはどこでとうもろこしを手に入れたのかいいません。ところが、若者はおばあさんのあとをつけ、おばあさんがとうもろこしを手に入れるところをみてしまいます。みられたことを知ったおばあさんは、若者にあることを命じ、おかげで平原には一面とうもろこしが実るようになります。秋野さんの力強い絵が印象的な、とうもろこしの起源を語った絵本です。現在品切れ。小学校低学年向き

余談ですが、白土三平が「ナータ」というタイトルで、同じくとうもろこし起源譚を漫画にしています(異色作品集2巻所収)。ただし、こちらは大変アダルトな内容になっています。

2009年11月12日木曜日

ゆきのねこ










「ゆきのねこ」(ダイヤル・コー・カルサ/作 あきのしょういちろう/訳 童話館 1995)

真冬に、たったひとり、森のはずれで暮らしていたエミリーは、一緒にくらす、かわいくて大きなねこがほしいと神様にお祈りしました。すると、神様は雪からねこをつくり、エミリーのもとへ届けてくれました。でも、けっしてゆきのねこを家に入れてはなりませんと、神様はいいました。

エミリーは神様のいいつけを破り、ねこを家に入れてしまいます。その結果、ねこはエミリーのもとを去ってしまうのですが、思いがけないかたちで、ねこはエミリーのまえにあらわれます。太い描線でえがかれたシンプルすぎるほどシンプルな絵は、きれいな色とあいまってとても魅了的です。静けさに満ちた、美しい読物絵本です。小学校高学年向き。

2009年11月11日水曜日

ちいさな天使と兵隊さん












「ちいさな天使と兵隊さん」(ピーター・コリントン/作 すえもりブックス 1990)

小さな兵隊と天使の人形を枕元において、女の子が眠りにつくと、そこへ海賊がやってきました。海賊が女の子の貯金箱から金貨を盗もうとしたので、小さな兵隊はそれをふせぎにいきました。ところが、兵隊は逆に海賊につかまってしまいました。そこで、天使の人形は、小さな兵隊を救いに、家のなかをさがしにでかけました。

文字のない、絵だけの絵本です。絵はコマ割りされています。絵はたいへん精緻で、コマ割りは緩急に富み、みる者を物語に引きこみます。小学校低学年向き。

ねずみの歯いしゃさんアフリカへいく












「ねずみの歯いしゃさんアフリカへいく」(ウィリアム・スタイグ/作 木坂涼/訳 セーラー出版 1995)

ねずみのソト先生は、腕のいい歯医者さんです。ある日、ソト先生のもとに一通の電報が届きました。「ニシアフリカ ダブワンヘ コラレタシ ムシバノ ゾウ タスケテ」 ソト先生と奥さんのデボラさんは、さっそく船に乗り、西アフリカのダブワンにむかいました。

さて、ダブワンに着いたソト先生は、虫歯のためろくにものを食べられないゾウのムタンボの治療をはじめます。でも、ムタンボは痛がって、地ひびきのような悲鳴をあげるので、なかなか進みません。しかも、治療を途中で切り上げたその晩、ソト先生は何者かにさらわれてしまいます――。

「歯いしゃのチュー先生」の続編。でも、前作と出版社や訳者がちがうためか、こちらではソト先生と呼ばれています。ちなみに、「歯いしゃのチュー先生」の原題は「DOCTOR DE SOTO」。この本の原題は「DOCTOR DE SOTO GOES TO AFRICA」です。

ところで、虫歯の治療中、ゾウはどんな顔をするのでしょう。それをちょっと想像してから読んでみると面白いです。スタイグのえがく、治療中のゾウの表情には、だれもが納得することでしょう。小学校低学年向き

2009年11月9日月曜日

ねずみとくじら











「ねずみとくじら」(ウィリアム・スタイグ/作 瀬田貞二/訳 評論社 1976)

海の大好きなネズミのエーモスは、ある日、自分でつくった船で大海原へこぎだしました。最初のうち、航海は順調だったのですが、ある晩、エーモスは船から転がり落ちてしまいました。なすすべもなく海面を漂い、力つきようとしたそのとき、エーモスのまえに1頭のクジラがあらわれました。

その後、クジラのボーリスに助けられたエーモスは、ぶじ故郷に帰ることができます。でも、そこで話は終わりません。こんどは大変な危機におちいったボーリスを、エーモスが助けます。エーモスとボーリスの友情が、心にしみじみと残ります。訳はいささか古めかしくなってしまっています。小学校中学年向き。

2009年11月6日金曜日

ミスター・ベンとあかいよろい












「ミスター・ベンとあかいよろい」(デビッド・マッキー/作 まえざわあきえ/訳 朔北社 2008)

ある朝、ミスター・ベンに仮装パーティーの招待状が届きました。ミスター・ベンはあまりパーティーが好きではありません。でも、仮装は大好きです。路地裏の古ぼけた店で赤い鎧をみつけたミスター・ベンは、さっそく店に入り、「きがえべや」で鎧を試着してみました。すると、「きがえべや」のなかには、入り口以外にもうひとつ、「おためしべや」と書かれた扉がありました。そこで、ミスター・ベンは「おためしべや」の扉をあけてみました…。

「おためしべや」のむこうは別世界。そこで、赤い鎧に身を包んだミスター・ベンは、マッチ売りに火つけの仕事を奪われてしまったという竜のために、ひとはたらきすることになります。本書は「ミスター・ベンのふしぎなぼうけん」シリーズの1巻目。シリーズは以後も、奇妙な服を着て、「おためしべや」を通って別世界へ、というパターンで続きます。最後はもとの世界にもどり、「こんかいのぼうけんは、これでおしまい」という、いつもの文句でしめくくられます。小学校中学年向き。

2009年11月5日木曜日

しごとをとりかえただんなさん










「しごとをとりかえただんなさん」(ウィリアム・ウィースナー/絵 あきのしょういちろう/訳 童話館出版 2002)

昔、ちいさな家に、若いお百姓とそのおかみさんが住んでいました。ある日、いつもの畑仕事からひどくくたびれて帰ってきただんなさんは、おかみさんにいいました。「おまえはずいぶん楽な暮らしをしているもんだ。このこじんまりした住み心地のいい家に、日がな一日いられるんだからな」「そんなことを思ってたのかい? おまえさん」と、おかみさんは陽気にこたえました。そして、つぎの日、二人は仕事をとりかえることにしました。

いざ仕事をとりかえてみたら、簡単だと思っていた家事で、だんなさんはつぎつぎに失敗にしてしまいます。その後ろで、おかみさんが着々と畑仕事をこなしているのがおかしいです。けっきょく、最後はもとのさやにおさまります。ノルウェーの昔話。小学校低学年向き。

余談になりますが、デイビッド・マッキーの「るすばんをしたオルリック」(はらしょう/訳 アリス館 1977)も、同じ昔話にもとづいた絵本です。

2009年11月4日水曜日

ひゃくにんのおとうさん












「ひゃくにんのおとうさん」(譚小勇(タン シャオヨン)/文 天野祐吉/文 譚小勇/絵 福音館書店 2005)

昔、山奥の小さな村に、はたらき者の若い夫婦が住んでいました。ある日、畑をたがやしていると、土の中から大きなかめがでてきました。なかをのぞきこんだ拍子に、かぶっていた笠がかめのなかに落ちてしまい、あわてて拾い上げました。すると、どうしたことか、笠はなんと100枚もでてきました。

…という、不思議なかめのお話。このあと、夫婦はあまった笠を村人たちにあげ、続いて鉄鍋を入れたらこれも増えたので、村人たちに配ります。ところが、かめの評判を耳にした地主は、夫婦からかめをとりあげてしまい…と物語は続きます。淡彩でえがかれた絵は、くせがなく、話の面白さとあいまって、だれもが楽しめる絵本になっています。「こどものとも世界昔ばなしの旅」シリーズ(全30冊)のうちの一冊。小学校低学年向き。

2009年11月2日月曜日

アラネア あるクモのぼうけん












「アラネア あるクモのぼうけん」(J.ワグナー/文 R.ブルックス/絵 大岡信/訳 岩波書店 1979)

クモのアラネアは、糸をつむいで風をつかみ、空をとんで、だれかの庭に着陸しました。丸まった葉っぱにもぐりこみ、隠れ家をつくって、夜になると網を張りました。そして、網をつくってはこわし、つくってはこわしして、何日もすごしました。夏の終わりも近いある夜、アラネアはなにかいやなことが起きつつあるのに気づきました。風が強まり、空が割れ、雨が降ってきました。

緻密で繊細なペン画による絵本です。嵐がきて、雨に流されてしまったアラネアは、人家に入りこみ、なんとか一命をとりとめます。1匹のクモの生きるための大冒険が、擬人化を排した語り口で静かに語られ、深い感銘をあたえてくれます。小学校中学年向き。