2009年8月31日月曜日

はげたかオルランドはとぶ

「はげたかオルランドはとぶ」(トミー・ウンゲラー/作 今江祥智/訳 文化出版局 1975)

ある日、砂漠のうえを飛んでいたオルランドは、金鉱さがしの男が倒れているのをみつけました。男のもちものをくわえ、あちこち訊ねまわったところ、旅券から、アメリカのバーモンド・プラテルボローからきたことがわかりました。そこで、オルランドはアメリカにいる奥さんとぼうやに、男のもちものを届けました。もちもののなかには金の石ころがありました。男は金鉱をみつけていたのです。そこで、奥さんとぼうやは、金の石ころを売り、お金をつくると、お父さんをさがしにメキシコに旅立ちました。

はげたかオルランドを主人公にした冒険物語絵本です。メキシコに渡ったあとも、山賊と一戦まじえたりなど、波瀾万丈。もちろん、最後は大団円です。絵本でも、こんなにスケールの大きな話がつくれるのかと目をみはります。

余談ですが、この絵本はカタカナの上にひらがなで「おるらんど」をフリガナを振ってあります。こういった絵本は最近みかけなくなりました。読みにくいことがわかったのでしょう。悲しいことに現在絶版。小学校低学年向け。

2009年8月28日金曜日

おしゃべりなたまごやき












「おしゃべりなたまごやき」(寺村輝夫/文 長新太/絵 福音館書店 1986)

ある国に、たまごの好きな王さまがいました。毎朝、朝ごはんを食べたあと、王さまは〈あいさつのへや〉にでかけました。大臣や兵隊の隊長などとあいさつをしたあと、最後にコックさんとあいさつです。「晩のおかずはなににしましょう?」「めだまやきにしてくれ」 休み時間、お城のなかを歩きまわっていた王さまは、鳥小屋をみつけました。ぎゅうぎゅうづめになっているニワトリをかわいそうに思った王さまは、鳥小屋のかぎをはずしました。すると、ニワトリがいきおいよく飛びだしてきて、王さまを追いかけはじめました──。

この後、王さまを助けた兵隊たちが犯人さがしをはじめ、怖くなった王さまがこっそりかぎを捨てると、それを一羽のメンドリがみていて…と、物語はまだまだつづきます。

「こどものとも版」もありますが、絵本とは絵も文章もずいぶんちがっています。絵本のほうが、絵も文章もともにふくよかになっています。くらべてみると面白いです。小学校低学年向け。

2009年8月27日木曜日

じごくのそうべえ












「じごくのそうべえ」(桂米朝・上方落語・地獄八景より 田島征彦/作 童心社 1978)

綱渡りをしていた軽業師のそうべえは、足を踏みはずしてあの世へ──。歯抜き師のしかい、医者のちくあん、山伏のふっかいらと道連れに、三途の川を渡り、閻魔大王のまえにやってきます。閻魔大王のいいかげんな裁きにより、4人は地獄へと追いやられてしまいますが…。

上方落語「地獄八景」をもとにした絵本です。落語らしく、とぼけた味わいがあります。田島征三さんの絵は大迫力。じんどんき(人呑鬼と書くのでしょうか?)の面相など、すさまじいかぎりです。文章は、ほぼ登場人物のセリフです。上方落語なので、セリフは関西弁。どの登場人物が、どの発言をしたか、いちいち記されていませんので、読み聞かせをするには熟練を要する1冊です。第1回絵本にっぽん賞受賞。1978年初版、2007年版は106刷。すでに古典といっていいでしょう。小学校低学年向き。

余談ですが、セリフの発言者が記されていないというのは、日本の絵本に多い気がします。

2009年8月26日水曜日

けものとかりゅうど

「けものとかりゅうど」(トミー・デ・パオラ/作 ほるぷ出版 1982)

朝起きた狩人は、着替えをし、鉄砲をもって、森へ狩りにでかけます。でも、動物たちは素早く木立にかくれてしまうので、狩人は獲物を捕まえられません。そして、夜になり、狩人が居眠りをはじめると、動物たちがよってきて狩人にいたずらをしかけます…。

文字のない絵本です。トミー・デ・パオラの様式化されたあたたかみのある絵が魅力的。この場面はどんな場面なのかと想像力をはたらかせながら読むと楽しいです。副題は「もじのないえほん」。現在品切れ。小学校低学年向き。

2009年8月25日火曜日

ハハハのがくたい









「ハハハのがくたい」(長谷川四郎/作「アラフラの女王」より たかはしゆうじ/文 やぎゅうげんいちろう/絵 福音館書店 2009)

ある島に7人の楽隊がやってきました。寝る場所と食べものがあればいいという7人組を、村人は雇います。7人は楽器をもっていません。かわりにお腹をたたいたり、口笛を吹いたりします。7人組の仕事はかんたんです。赤ん坊が生まれたら音楽をやり、ひとが死んだら音楽をやり。ところが、半年ほどすぎたときのこと、7人組のことが大きく新聞に載ったのです──。

とてもにぎやかな文章に、にぎやかな絵。文章はたとえばこうです。
「おいらを やとった ハハハはどこだ
 ちんどらら ちんどらら プップピペポーパー」
声にだして読めば、さぞ楽しそうです。また、最後の、見開きいっぱいに描かれた新聞記事は、かなり読みごたえがあります。小学校低学年向け。

ちなみに奥付によれば、本書は、1985年に「こどものとも」の1冊として出版されています。それが、こどものともコレクション2009全15冊中の1冊として、今回新たに「特捜版」の名で出版されたということです。

2009年8月24日月曜日

メイゼルとシュリメイゼル









「メイゼルとシュリメイゼル」(アイザック・B・シンガー/文  マーゴット・ツェマック/絵  木庭茂夫/訳 富山房 1976)

ふたりの妖精がある村を通りがかりました。ひとりは、幸運という名のメイゼル、もうひとりは不運という名のシュリメイゼルです。メイゼルは、ひとを幸せにするやりかたを100万も知っているといいますが、シュリメイゼルはひとを不幸にするやりかたを千万も知っているといいます。メイゼルが1年かけて村いちばんの貧乏人を幸せにするというと、シュリメイゼルは1秒でそれをだめにしてみせるといいます。そこで、2人はじっさい村いちばんの貧乏人を相手に賭けをすることにしました。シュリメイゼルは、事故や病気などという古くさいやりかたをつかってはいけません。さて、賭けはどうなるでしょうか。

副題は「運をつかさどる妖精たちの話」。絵本というより、長いお話に、すばらしい絵のついた大きな本といった感じです。シンガーのお話は、登場人物全員に見せ場が用意されていて、短編小説のよう。とても面白く、読み終わると運命の変転になんだかはるばるとした気持ちになります。小学校中学年向け。

2009年8月21日金曜日

怪物ヌングワマを退治したむすめの話

「怪物ヌングワマをたいじしたむすめの話」(エド=ヤング/再話・絵 渡辺茂男/訳  偕成社 1982)

ある娘が、年とった父母のうちに菓子を届けにいきました。すると、その途中、竹やぶからおそろしい化け物のヌングワマとびだしてきました。「菓子をよこせ」とヌングワマはいいましたが、娘は渡しませんでした。するとヌングワマがいいました。「夜がふけてからおまえのうちに押しかけて、おまえを食ってやる」

その後、娘が泣いていると、物売りが針をくれ、男が下肥(しもごえ)をくれ、蛇売りが蛇をくれと、娘はさまざまなものをもらいます。娘はそれらをうまくつかい、ヌングワマを退治します。

中国の昔話の再話絵本。文章は緊張感がありすぎるほど。水彩で描かれた絵も見事です。また、夜更けにやってくるヌングワマをちゃんとみせない演出も効いています。小学校中学年向け。エド=ヤングは1931年、中国の天津で生まれ、上海で育ち。19歳で渡米したそうです。「ロンポポ」(藤本朝巳/訳 古今社 1999)でコルデコット賞を受賞していますが、個人的にはこちらのほうが好きです。小学校中学年向け。

2009年8月20日木曜日

きっとみんなよろこぶよ!










「きっとみんなよろこぶよ!」(ピーター・スピアー/作 松川真弓/訳 評論社 1987)

土曜日の朝、お母さんがお父さんにいいました。「家の塗りかえ、いつやってくださるの?」。それから2人はでかけました。留守番をすることになった3人の子どもたちは、車庫のなかにたくさんのペンキをみつけました。さらにはけは物置で、踏み台は台所で。そこで3人は…。

というわけで、子どもたちが家をものすごい色に塗り変えてしまうという絵本です。徐々にすごい色になっていく様子が圧巻です。子どもたちは家を塗りかえ終わったあと、感心なことにあとかたづけもします。まあ、それもすさまじいのですが。色を塗りかえた感じに絵を描くという、スピアーの絵のうまさが光っています。また、塗りかえ終わった子どもたちは、お父さんとお母さんが帰ってきたらきっとよろこぶねと、ご満悦なのがおかしいです。小学校低学年向け。

2009年8月19日水曜日

マイク・マリガンとスチーム・ショベル











「マイク・マリガンとスチーム・ショベル」(バージニア・リー・バートン/作 いしいももこ/訳 童話館 1995)

マイク・マリガンは、メアリーアンという名前のきれいな赤いスチーム・ショベルをもっていました。マイクとメアリは、いままで運河を掘ったり、高い山を切りひらいたり、たくさんの仕事をしてきました。ところが、新式のショベルがつぎつぎに発明されたので、マイクとメアリは仕事がなくなってしまいました。ある日、ポンパビルという町で新しい市役所をつくるという新聞記事をみつけたマイクは、おれたちで市役所の地下室を掘りにいこうと、メアリと一緒に出発しました。

ポンパビルに到着したマイクとメアリは、1日で市役所の地下室を掘るという難題に挑戦します。それが終わったあと、さらにどんでん返しが待っています。バートンの絵本は盛りだくさんです。小学校低学年向き。

2009年8月18日火曜日

はるかな島











「はるかな島」(ダイアン・ホフマイアー/文 ジュード・ダリー/絵 片岡しのぶ/訳 光村教育図書 2008)

昔、自分のことを化け物のように感じた男がいました。男は海に飛びこみ、ひとり孤島で暮らしはじめました。島に船がやってくると、男は姿をかくしました。男は船乗りたちが残していった果物を育て、荒れ地だった島は、いつしか緑にかわっていきました。

巻末の解説によれば、本書は実話をもとにした絵本です。島を緑でいっぱいにした男は、ラストで自分は化け物ではなかったと悟ります。透明感のある水彩の絵が魅力的な読み物絵本です。小学校高学年向き。

2009年8月17日月曜日

八方にらみねこ











「八方にらみねこ」(武田英子/文 清水耕蔵/絵 講談社 2003)

昔、雪のなかを一匹の三毛の子猫が歩いていました。年寄り夫婦にひろわれたみけは、夫婦が飼っているおかいこ様を守ろうと、ねずみに立ち向かいます。が、まったく歯が立ちません。そこで、みけはねずみたちが恐れている山ねこさまに、八方にらみの術を教わりに、山にのぼっていきました。

民話調の語り口の絵本です。ねずみがうたう歌もあり、読み聞かせにつかうには難易度が高いです。でも、口をへの字にまげて、目を見開くみけの姿は、一度みたら忘れられません。第19回ボローニャ国際児童図書展エルバ賞受賞。第4回絵本にっぽん賞受賞。小学校中学年向き。

2009年8月14日金曜日

みどりの船












「みどりの船」(クェンティン・ブレイク/作 千葉茂樹/訳 あかね書房 1998)

夏休みをおばさんのうちですごしていたぼくとアリスは、壁をこえ、お屋敷の庭にもぐりこみました。庭はまるで大きな森のよう。木々を抜けると、そこには船がありました。「水夫長! あそこにいるのはだれでしょう。密航者ではないかしら」と、やせた女のひと──トリディーガさんが、庭師のようにみえる水夫長にいいました。こうして、ぼくとアリスはトリディーガさんのもとで、ひと夏の航海にでることになったのです。

航海といっても、庭にある船でおこなわれるごっこ遊び。でも、船は嵐を乗りこえ、最後は港にたどり着きます。ひと夏の体験をノスタルジックにえがいた名篇です。献辞はジョーン・エイキンに捧げられています。小学校高学年向け。

2009年8月13日木曜日

ロバのシルベスターとまほうの小石












「ロバのシルベスターとまほうの小石」(ウィリアム・スタイグ/作 瀬田貞二/訳 評論社 2006)

変わった色や形の小石をあつめるのが好きなロバのシルベスターは、ある日、奇妙な小石をみつけました。その小石を手にもって願いごとをいうと、その願いがかなうのです。父さんと母さんにみせようと、シルベスターは急いでうちに帰りました。ところが、その途中、ライオンに出くわしたシルベスターは、思わず「岩になりたい」といってしまいました。岩になってしまったシルベスターは、もとの姿にもどれるのでしょうか。

シルベスターが岩になってしまったあと、とても悲しむ父さんと母さんの姿が印象的です。小学校低学年向き。

ウィリアム・スタイグは本書で1970年のコールデコット・オナー賞を受賞しました。2006年発行の新版では、ウィリアム・スタイグの受賞スピーチ(さくまゆみこ訳)が掲載されています。スピーチはごく短いもので、その理由をスタイグさんはこういっています。

「私がここに立つことになったのは小さな絵本のおかげなのですから、形式から言っても、絵本より長いスピーチをするべきではないのです」

2009年8月12日水曜日

しーっ!ぼうやがおひるねしているの












「しーっ!ぼうやがおひるねしているの」(ミンフォン・ホ/作 ホリー・ミード/絵 安井清子/訳 偕成社 1998)

ハンモックで寝ている赤ちゃんのところに蚊が1匹やってきました。お母さんは蚊にお願いします。「蚊さん、蚊さん、しずかにしてね。ぼうやがおひるねしてるの」。こんどは天井にいるヤモリ、つぎは床下の黒猫、つぎつぎにあらわれる動物たちに、お母さんはお願いしていきます。

タイが舞台の絵本です。お母さんがあちこちお願いをしてまわっている最中に、当の男の子はうしろで遊んでいるのがおかしいです。また、動物がどんどんスケールアップしていくのも楽しいところです。絵は切り絵風。はっきりした色あいで、よく空間が表現され、遠目が効きます。作者のミンフォン・ホはミャンマー生まれ。少女時代をタイですごしたそうです。1997年度コルデコット賞次席作品。現在品切れ。小学校低学年から。

2009年8月11日火曜日

からすたろう












「からすたろう」(やしまたろう/作 偕成社 1979)

学校がはじまった日、男の子がひとりいなくなりました。その子は教室の床下にかくれていました。とても小さいため、「ちび」と呼ばれるようなった男の子は、先生をこわがってなにもおぼえられませんし、クラスの子たちとも友だちになれません。ちびは雨の日も嵐の日も、とぼとぼと学校にやってきては、みんなに馬鹿にされながら、ひとりで退屈しないやりかたをつぎつぎにみつけだしていきました。

こんなちびに、6年生のときに転機がおとずれます。いそべ先生が新しい受け持ちになったのです。いそべ先生は、ちびが草花のことをよく知っているので感心します。また、ちびが描いた絵や習字も気に入り、壁に貼りだしてくれます。その年の学芸会で、ちびはカラスの鳴き声を、みんなに披露します。

話はまだ終わりません。小学校を卒業し、はたらくちびの姿がえがかれます。ちびはもうちびではなく、からすたろうと呼ばれています。からすたろうと呼ばれると、「そのなまえがきにいったというように うなずいては、ほほえむのでした」

鮮やかな黄色が印象的です。表紙から、あまり手にとられないかもしれませんが、すばらしい絵本です。1956年のコールデコット賞次席。小学校中学年向け。

2009年8月10日月曜日

おじいちゃんのところ












「おじいちゃんのところ」(ヘレン・V.グリフィス/文 ジェームズ・スティーブンソン/絵 あきのしょういちろう/訳 童話館出版 2007)

ある日、ジャネッタはお母さんとおじいちゃんの家にいきました。ひと晩中列車に乗り、着いたうちを、ジャネッタは気に入りませんでした。家は古びているし、ポーチには意地悪そうな顔をした猫がいるし、天井にはスズメバチの巣があるのです。おまけのラバなんて、大きいけものまでいます。すると、その晩、おじいちゃんはジャネッタにお話をはじめました。

おじいちゃんのお話をきっかけに、ジャネッタはおじいちゃんのうちでの生活に馴染んでいき、動物たちとも仲良くなっていきます。本書は、佑学社から1988年に出版された「おじいちゃんの家」をタイトルを変え、新たな翻訳で出版したものです。前の訳者は今村葦子さん。小学校低学年向き。

2009年8月7日金曜日

ねこのくにのおきゃくさま












「ねこのくにのおきゃくさま」(シビル・ウェッタシンハ/作 松岡享子/訳 福音館書店 1996)

海を越えたはるかかなたに、猫の国がありました。猫の国のひとたちは、みんなはたらき者で、なに不自由のない暮らしをしていました。でも、なにかがたりません。というのも、この国には音楽も踊りもなかったのです。ところが、ある日、海のむこうからみたことのない船がやってきました。大きなお面をつけたひとが二人降りたかと思うと、踊ったり、音楽をしたりしました。これが音楽と踊りというものかと、猫たちはとてもいい気持ちになりました。不思議なお客たちはすぐ評判になり、王の御殿に招かれることになりました。でも、二人は一度もお面をとらなかったので、どんな顔をしているか、だれも知りません。二人はいったい何者なのでしょう。

スリランカの絵本です。デフォルメされた猫たちの顔がたいへんかわいいです。不思議なお客の正体も以外ですが、正体を知ったあとの王様の振るまいも立派です。小学校低学年向け。

2009年8月6日木曜日

おじいさんのハーモニカ












「おじいさんのハーモニカ」(ヘレン・V・グリフィス/作 ジェイムズ・スティーブンソン/絵 今村葦子/訳 あすなろ書房 1995)

ある夏のこと、孫娘がおじいさんをたずねてきました。女の子は畑仕事を手伝いましたが、最初のうちはうまくできません。でも、おじいさんは「おかげでとてもはかどった」といいました。夕方になると、おじいさんはハーモニカを吹いてくれました。ふたりはとても仲良しになりました。ところが、つぎの年の夏、女の子がおじいさんの家にいってみると、おじいさんは病気になっていました。

このあと、女の子はおじいさんのためにハーモニカを吹きます。おじいさんと女の子の交流をえがいた、あたたかい絵本です。夕方、おじいさんがハーモニカを吹く場面を引用してみましょう。

《「わしは、ほんとうは、コオロギやバッタのために吹いているんだよ。昼間、わしらに、いい音楽を聞かせてくれたから、そのおかえしさ」
おじいさんは言いました。
「あれたちは、音楽がすきなんだ」
とも、おじいさんは言いました。そして女の子も、そのとおりだと思ったのです。》

本書は1987年に佑学社から出版された本の再版です。小学校中学年向き。

2009年8月5日水曜日

ちかい












「ちかい」(ポール・ジェラティ/作 せなあいこ/訳 評論社 1996)

ある朝、ヤミーナはおじいちゃんと一緒に茂みの奥にハチミツをとりにでかけました。「あたし、ゾウがみたいの」というヤミーナに、おじいちゃんはこたえました。「運がよければな。狩人がやってきてから、数がへったからな」。狩人の真似をして、ひとりで茂みの奥に入りこんでしまったヤミーナは、とても悲しそうな鳴き声を聞きました。声のほうにいってみると、小さな子どものゾウが、倒れている母さんゾウをゆり起こそうとしていました。

アフリカを舞台にした絵本です。このあと、ヤミーナは子ゾウをゾウの群にとどけるため旅をします。リアルに描かれた絵がすばらしく、文章も緊張感があります。母を失った子ゾウと、迷子になったヤミーナの二人の心細さが、テーマを強く打ち出しています。小学校中学年向け。

2009年8月4日火曜日

うんがにおちたうし










「うんがにおちたうし」(フィリス・クラシロフスキー/作 ピーター・スパイアー/絵 みなみもとちか/訳 ポプラ社 1994)

ヘンドリカは不幸せな牛でした。みわたすかぎりの平べったいオランダの畑のなかで、納屋や風車ばかりながめて暮らすのは、もうあきあきしていました。ところが、ある日、夢中になって草を食べていたヘンドリカは、運河に落ちてしまいました。そして、古ぼけた大きな箱にぶつかり、それを押しているうちに、箱に乗ってしまいました。箱はどんどん流されて、とうとうヘンドリカは町にやってきました。

町にやってきたヘンドリカは、それまで考えていたことを全部やってのけます。帰りはどうするのだろうと思っていると、そこもうまく収まります。絵本は横長で、ひらいたときのパノラマ感が素晴らしいです。また、細部がよく描きこまれているので、みていて飽きることがありません。絵を描いたピーター・スパイアーは、おそらくピーター・スピアーのことでしょう。小学校低学年向き。

2009年8月3日月曜日

それでいいのだ!










「それでいいのだ!」(ジェイムズ・スティーブンソン/著 麻生九美/訳 評論社 1979)

おじいちゃんのうちは、いつでも、なんでもまるっきりおんなじです。毎朝おんなじものを食べ、かかさず新聞を読み、いつもおんなじことばかりいいます。「おじいちゃんて、どうしておもしろいことちっともいわないの?」「おもしろいことなんかなにもないのさ、きっと」 メアリーとルイがそう話していると、つぎの日、おじいちゃんがいつもとちがう、奇想天外なお話をはじめました。

「ベッドの下になにがいる?」と同じ人物構成です。シリーズなのかもしれません。おじいちゃんが、ひと晩かけてお話を考えていたかと思うと、なんだかほのぼのします。この本も、コマ割りの多い読みもの絵本です。小学校中学年向き。

作者は、大人の本では「大雪のニューヨークを歩くには」という本を書いています。これも、イラストがたくさんあり、語り口はユーモラスな、たのしい本です。「それでいいのだ!」も「大雪…」も現在品切れです。

2009年8月1日土曜日

ベッドのしたになにがいる?










「ベッドのしたになにがいる?」(ジェームズ・スティーブンソン/作 つばきはらななこ/訳 童話館出版 2007)

おじいちゃんから怖い話を聞いたメアリーとルイは、なかなか寝つけません。しかも、ベッドの下になにかいる! ふたりは大慌てで、おじいちゃんのところにやってきます。すると、「わしが子どものころも同じようなことがあったなあ」と、おじいちゃんは話をはじめます。

話のなかのおじいちゃんは、子どもなのになぜか口ひげをたくわえています。そして、おじいちゃんが子どものころ出会った怖いものの話をすると、メアリーとルイが「それはホタルだったんじゃないの」などと冷静に指摘していきます。さっきまで、あんなに怖がっていたくせにとなにやらおかしくなります。コワ割りが多々あるので、お話会向きではありません。読みもの絵本です。小学校中学年むき。

また、本書は「ベッドのまわりはおばけでいっぱい」のタイトルで佑学社より1984年に出版されたものを、改題、新訳したものです。